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東京プロトコール

概要

東京プロトコールは、科学館が社会に貢献し続けるための行動方針をまとめたものです。国連の持続可能な開発目標(SDGs)を支持するため、世界の科学館ネットワークによって合意されました。

背景

世界科学館サミット(SCWS)は、1996年以来6回にわたって行なわれてきた「世界科学館会議(Science Centre World Congress)」を引き継ぐもので、2010年、科学館関係者内の協力強化を行なってきた会議の成果を社会に広げるという新たな目標を掲げ、発足しました。そして、2014年に第1回となるSCWS2014がメヘレン(ベルギー)の科学館・テクノポリスにおいて開催され、よりよい社会に向けた市民の参画を促すための包括的な行動方針として「メヘレン宣言」が採択されました。
SCWS2017の開催に向けて、世界の科学館ネットワークはメヘレン宣言をより実効的に展開していく重要性を確認し、持続可能な未来の実現を目指す「東京プロトコール」を採択しました。

関連する取組

世界科学館デー

世界の科学館は、科学、技術とそれらに関連する意思決定、そして世界が直面する重要な課題の解決に向けた人々の関与を促すという重要な役割をより広く周知するため、2016年11月に初の世界科学館デーを設定し、記念イベントなどを開催しました。 2017年のISCSMDは11月10日です。

東京プロトコール

~「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向け科学館が果たすべき役割~

前文

世界中の科学館は、これまであらゆる世代に対して、科学が生活に及ぼす影響について伝え、理解を促すことで、市民の科学リテラシーの向上と社会参加の推進に貢献してきました。1996年以降、6回に渡る世界科学館会議を開催し、会議にて採択した2つの宣言(トロント宣言・ケープタウン宣言)の中でこれまでの貢献を共有しました。その後、世界科学館会議を基盤とした世界科学館サミット(SCWS)を2014年に初めてベルギーのメヘレンで開催し、よりよい社会の実現に向け市民参加を推進するための科学館の具体的な行動指針を記したメヘレン宣言を採択しました。
第2回大会であるSCWS2017を2017年11月15日から17日に東京で開催するにあたり、メヘレン宣言賛同者は、宣言を実践に移す重要性を認識した上で、グローバル・サステナビリティに対する市民参加をさらに推進するために、以下の東京プロトコールを制定するに至りました。

東京プロトコール

東京プロトコール賛同者は、2015年に採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」について、

  • 科学・技術・工学・数学(STEM)は、SDGsの課題の解決に不可欠であり、地域や文化を超えて例外なく必要とされていることを認識し、
  • 市民による科学技術への参加と行動がSDGs達成のための重要な要素であることを強調し、
  • 地球上のすべての生命体のために、SDGs達成に向けたローカルからグローバルにわたる世界中の組織の今日までの貢献や成果を支持し、
  • SDGsが取り組もうとする課題に対して、世界中のコミュニティのあらゆる個人が行動を起こさなければならないことを考慮し、
  • 今日の世界における、科学、技術、人口、経済のめまぐるしい変化が、SDGsを達成するための協働に対して、課題と新しい好機のいずれをももたらすことも認識し、
  • 世界中の約3000の科学館が年間3億1000万人以上の来館者に影響を与え、市民がともにSDGs達成に取り組む一員となるための意識醸成を促しているということを認識し、
  • 科学館が世の中の変化に敏感かつ迅速に反応し、積極的に行動を起こし、絶えず変化し続ける社会において果たすべき役割のヴィジョンを共有することを自信を持って表明し、

その達成に取り組むことを宣言します。

既に合意している事項について

2014年3月19日、ベルギー、メヘレンで開催された第一回世界科学館サミットにおいて「メヘレン宣言」が署名・採択されました。このプロトコールは、以下に記す7つの行動指針を定めたメヘレン宣言を支持し、補足するものです。

  1. 地域社会、および多様化していく来館者と手を結ぶためにはどうすればいいか。その際、ジェンダーによる格差を常に意識するにはどうすればいいか。さらに効果的な方法を探る
  2. 世界全体に良き影響を与えるよう行動し続け、人類の持続可能な進歩のために科学技術が貢献できる可能性があることを、世界中の人々にもっとわかってもらう。
  3. 地球規模で人々の目にとまるような活動をすることで、政策立案者やメディアに、科学技術への市民関与の重要性を認識させる。
  4. 科学館とは“信頼できる場所”である、という地位を確立するよう努める。新しい技術による解決策や持続可能な技術を人々に紹介し、その活用を促進する場であるからだ。
  5. 様々な背景において適切なテクノロジーを駆使し、公式と非公式の両方の場面で学習者の参画と教育の最適化ができるよう、より良い方法を率先して開発していく。
  6. 一般市民をより直接に研究活動に参画させる。参画させることで人々を力づけ、考え方を拡げると同時に、大学や研究機関の活動を社会や、より広範囲な地球規模的な社会問題に対して意義のあるものにする。
  7. 2019年の国際科学館年を成功させるために協力し、世界中の人々が科学技術と社会の関係についてお互いの経験を共有するように推進する。

東京プロトコールの制定目的

  • 多様化が進むコミュニティにおいて、様々に関係し合うステークホルダーがSDGsで取り扱われる課題をより深く理解するためのプラットフォームとして科学館を認識し、活用すること。
  • 科学館がメヘレン宣言の行動指針とも調和的なSDGsに関して達成してきたことについて、世界中の政策決定者に広く知らしめること。

東京プロトコール賛同者の行動方針

  1. SDGsの普及啓発、または達成に向けた行動への市民参加の重要性と緊急度を鑑み、優先的に取り組みます。
  2. SDGsを念頭に、地域社会にとって有意義または有益な活動を取り組みます。
  3. 喫緊な課題に対する社会のあらゆる立場の人々が意見と議論を交わすためのプラットフォームとなります - 急速な社会変化の中生まれたもの、在来知に由来するもの、あるいは伝統に立脚するものすべてを含め、アイディア、文化と考え方の橋渡しになります。
  4. SDGsの普及啓発や、達成に向けた市民参加を促すために、科学館の取り組みに共鳴する組織と新たに協力関係を築き、あるいは既存の連携を強化します。
  5. SDGsへの市民参加をより効果的に促進するために、技術革新から生まれた新しい手法を取り入れます。
  6. SDGs達成に向けて、世界中の研究コミュニティによってもたらされた進歩と新たな課題について、信頼されるコミュニケーターとなります。
  7. SDGsを達成するために、あらゆる地域において科学館の数、機能と取組が向上するように支援します。
  8. 寛容さと批判的思考を促すこと、事実と主観を区別すること、根拠に基づく意思決定を強化すること、SDGsがよりよい社会を実現するための基盤になると若い世代を鼓舞することを通じて、社会における相互理解と協働を促す触媒としての責任を果たします。
  9. メヘレン宣言の第7項に定めた国際科学館年は、その趣旨を踏まえて世界科学館デーとして取り組むこととし、可能な限りこの取り組みを含む形で、国際協働による市民参加型のSTEM活動を支援します。

東京プロトコール(英語)(PDF)はこちらから